労働保険は、原則として事業の種類と所在地ごとに、それぞれ別の保険関係が成立します。
そのため、本社や支店、営業所など複数の事業所がある場合は、それぞれで保険関係成立届を提出し、労働保険番号が付与されます。
事業所が増えると、年度更新や各種変更手続きなども事業所ごとに行うことになり、管理の手間が増えてしまいます。
そこで設けられているのが継続一括です。
継続一括は、一定の要件を満たす複数の継続事業を一つにまとめ、年度更新などの手続きを効率化できる制度です。
この記事では、継続一括の仕組みや要件、手続きの流れ、認可後の変更手続きについてわかりやすく解説します。
継続一括できる事業
継続一括は、継続事業について利用できる制度です。
一般企業などの一元適用事業だけでなく、建設業などの二元適用事業でも利用できます。
一元適用事業
一般企業では、本社や支店、営業所などの継続事業を一つにまとめて継続一括することができます。
二元適用事業
建設業などの二元適用事業では、雇用保険と労災保険を別々に取り扱います。
そのため、継続一括の対象も次のようになります。
- 雇用保険(継続事業)
→ 継続一括 - 労災保険(事務所等・継続事業)
→ 継続一括 - 労災保険(工事現場・有期事業)
→ 単独有期・一括有期
つまり、継続一括が利用できるのは継続事業です。
一方、建設工事などの有期事業は継続一括の対象ではなく、「単独有期」または「一括有期」という別の制度が適用されます。
有期事業
建設工事などの有期事業は、工事が終わると保険関係も終了するため、継続一括の対象にはなりません。
このような有期事業には、「単独有期」と「一括有期」という別の制度があります。
単独有期は工事ごとに保険関係を成立させる方法、一括有期は一定の要件を満たす複数の工事を一つにまとめて手続きする方法です。
つまり、継続事業には「継続一括」、有期事業には「一括有期」という、それぞれ異なる制度が用意されています。
継続一括の要件
継続一括は、複数の事業を一つの保険関係として管理するため、次の要件を満たす必要があります。
同一事業主であること
継続一括できるのは、同じ事業主が行っている事業に限られます。
例えば、親会社と子会社は別の事業主であるため、継続一括はできません。
継続事業であること
継続一括の対象は、継続事業です。
建設工事などの有期事業は対象外となり、「単独有期」または「一括有期」の制度を利用します。
事業の種類が同じこと
事業の種類が異なる場合は、継続一括できません。
例えば、製造業と小売業を一つにまとめることはできません。
保険関係区分が同じこと
一元適用事業と二元適用事業は、それぞれ別の保険関係として扱われます。
そのため、
- 一元適用事業同士
- 二元適用事業の雇用保険同士
- 二元適用事業の労災保険(事務所等)同士
のように、保険関係区分が同じ事業だけを継続一括できます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 同一事業主 | 同じ事業主が行う事業であること |
| 継続事業 | 有期事業は対象外 |
| 事業の種類 | 同じ事業の種類であること |
| 保険関係区分 | 一元同士、または二元の同一区分 |
継続一括の手続き
継続一括は、自動的に適用される制度ではありません。
事業主が申請し、認可を受けることで利用できます。
認可を受けると、指定事業が窓口となり、被一括事業を含めた年度更新や各種変更手続きをまとめて行います。
例えば、本社を指定事業、支店を被一括事業として認可を受けると、本社でまとめて年度更新などの手続きを行えるようになります。
労災保険の給付請求はまとめられません
継続一括は、事業主が行う労働保険の手続きをまとめる制度です。
一方、労災保険の給付請求は、災害が発生した事業場を管轄する労働基準監督署で行います。
そのため、被一括事業で発生した労災事故についても、指定事業ではなく、被一括事業を管轄する労働基準監督署が窓口になります。
提出書類と提出先
継続一括を新たに始める場合や、被一括事業を追加・取り消す場合は、それぞれ所定の申請書を提出します。
提出書類と提出先は次のとおりです。
| 手続き | 提出書類 | 提出先 |
|---|---|---|
| 新たに継続一括を始める | 継続事業一括認可申請書 | 指定事業を管轄する労働基準監督署 |
| 被一括事業を追加する | 継続事業一括認可・追加・取消申請書 | 指定事業を管轄する労働基準監督署 |
| 被一括事業を取り消す | 継続事業一括認可・追加・取消申請書 | 指定事業を管轄する労働基準監督署 |
なお、新たに被一括事業となる事業所は、あらかじめ保険関係が成立し、労働保険番号が付与されている必要があります。保険関係成立届については、「保険関係成立届の手続き完全ガイド|提出先・期限・書き方・記入時の注意点」をご覧ください。
新たに継続一括を始める場合の手続きの流れ
新たに支店や営業所を設置して継続一括を行う場合は、一般的に次の流れで手続きを行います。
- 保険関係成立届を提出する
提出先:新たに設置した事業を管轄する労働基準監督署 - 労働保険番号の交付を受ける
- 継続事業一括認可申請書を提出する
提出先:指定事業を管轄する労働基準監督署 - 認可後は指定事業で各種手続きを行う
被一括事業の追加や取り消しも、基本的な手続きの流れは同様です。提出書類と提出先は前表をご確認ください。
記入方法
各様式の具体的な記入方法は、東京都労働局の記入例「継続事業一括申請の手続の仕方」に分かりやすくまとまっています。記入例については、こちらをご参照ください。
継続一括に関わる変更手続き
継続一括の認可を受けた後も、事業所の新設や廃止、会社名の変更などがあった場合は、変更手続きが必要になります。
変更内容はさまざまですが、基本的には、次の手続きを組み合わせて対応します。
| 主な手続き | 例 | 様式 |
|---|---|---|
| 新しい事業の保険関係を成立させる | 新しい支店・営業所を設置した | 様式第1号 保険関係成立届 |
| 指定事業の名称・所在地などを変更する | 会社名が変わった、指定事業が移転した(指定事業は同じ) | 様式第2号 名称・所在地等変更届 |
| 継続一括を始める、被一括事業を追加・取り消す | 継続一括を開始する、新しい支店を追加する、支店を廃止する | 様式第5号 継続事業一括認可・追加・取消申請書 |
| 指定事業や被一括事業の内容を変更する | 指定事業を別の事業場へ変更する、被一括事業の名称・所在地を変更する | 様式第5号の2 継続事業一括変更申請書・継続被一括事業名称所在地変更届 |
| 保険料を申告・精算する | 吸収された指定事業の確定保険料申告、増加概算保険料の申告 | 様式第6号 概算・増加概算・確定保険料申告書 |
代表的な変更例は次のとおりです。
| ケース | 主な手続き(代表例) |
|---|---|
| 本店を移転した | 指定事業が変わらない場合(引越しなど)は、名称・所在地等変更届(様式第2号)を提出します。 指定事業そのものを別の事業場へ変更する場合(既存の支店を本店にするなど)は、継続事業一括変更申請書(様式第5号の2)を提出します。 |
| 会社名が変わった | 指定事業の名称変更は名称・所在地等変更届(様式第2号)を提出します。 被一括事業の名称も変更する場合は、継続被一括事業名称所在地変更届(様式第5号の2)も提出します。 |
| 新しい支店・営業所を設置した | 新しい事業の保険関係成立届(様式第1号)を提出した後、被一括事業の追加手続き(様式第5号)を行います。 |
| 支店・営業所を廃止した | 被一括事業の取消手続き(様式第5号)を行います。 |
| 合併した | 吸収される会社の指定事業を、吸収する会社の被一括事業となるよう指定事業を変更(様式第5号の2)します。 必要に応じて被一括事業の名称・所在地を変更し(様式第5号の2)、保険料を精算します(様式第6号)。 |
| 分割・分社化した | 新しく設立した事業の保険関係成立届(様式第1号)を提出します。 被一括事業の所属変更(様式第5号の2)や保険料の精算(様式第6号)を行います。 |
| 事業譲渡した | 譲渡の内容に応じて継続一括の変更(様式第5号の2)を行い、必要に応じて保険料を精算します(様式第6号)。 |
※変更内容によって必要な手続きは異なります。ここでは代表的な例を紹介しました。実際の手続きは変更内容や事業の状況によって異なるため、事前に管轄の労働基準監督署へ確認することをおすすめします。


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