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労災の成立届を出していないとどうなる?未手続の事業主にかかる費用

労災保険の成立届を出していなかった。

「労災事故が起きたら、労働者は労災保険を使えるのだろうか。」

「成立届を出していないのだから、労災保険は使えないのでは?」

とても気になります。

結論から言えば、成立届を出していなくても、労働者は原則として労災保険の給付を受けることができます

一方で、未手続だった事業主には、労働保険料の遡及徴収や追徴金、さらに一定の場合には労災保険給付に要した費用の徴収など、大きな負担が生じることがあります。

この記事では、成立届を出していなかった場合に、労働者と事業主がそれぞれどうなるのかを、制度の仕組みに沿って分かりやすく解説します。


目次

成立届を出していなくても、労働者は労災保険を使える

労災保険は事業主が加入するかどうかを選べる保険ではありません。

原則として、労働者を一人でも雇った時点で、法律上、自動的に労災保険の保険関係が成立します。

そのため、成立届を提出していなかったとしても、「労災保険に加入していない」ということにはなりません。

未手続の期間中に労災事故が発生した場合でも、要件を満たしていれば、労働者は労災保険の給付を受けることができます

ただし、成立届を提出していなかった事業主には別の問題があります。

次に、未手続だった場合に事業主にどのような負担が生じるのかを見ていきます。

参考:労働保険とはどのような保険ですか。また、労働保険に入るにはどうしたらよいのですか


保険料に関する負担


遡って保険料を支払う

成立届を提出していなかったとしても、その期間の労働保険料を支払わなくてよいわけではありません。

労働者を雇った時点で法律上は保険関係が成立しているため、本来納めるべきだった労働保険料は、未手続の期間について遡って徴収されます。

保険料は、原則として過去2年間分が遡って徴収されます。

また、行政庁が調査などによって未手続を把握した場合には、職権で保険関係を成立させ、労働保険料を認定・決定することがあります。

参考:平成25年度決算検査報告

追徴金が課される場合がある

認定決定された労働保険料については、追徴金が課される場合があります。

追徴金は、認定決定された労働保険料の原則10%です

「行政から指導を受けた場合だけ追徴金がかかる」と思われることがありますが、そうではありません。

未手続であったことにより行政庁が認定決定を行った場合には、法律に基づいて追徴金が課される仕組みになっています。

なお、この追徴金は保険料に対する負担です。

次に説明する「労災保険給付に要した費用の徴収」とは別の制度であり、それぞれ異なる趣旨で設けられています。

参考:成立手続きを怠っていた場合は

労災事故が起きると、さらに費用徴収の対象になる

未手続の事業主にとって、最も大きな負担となる可能性があるのが、労災保険給付に要した費用の徴収です。

これは、先ほど説明した労働保険料や追徴金とは別の制度です。

成立届を提出していなかった事業主について一定の要件に該当する場合には、労災保険給付に要した費用の全部または一部が徴収されることがあります。

労災保険給付に要した費用とは、労災保険から支給された療養補償給付(治療費)や休業補償給付などの保険給付に要した費用をいいます。

つまり、本来は労災保険が負担した費用の一部または全部を、事業主から徴収する制度です。

対象となるのは、成立手続を行わなかったことについて、「故意」または「重大な過失」があったと認められる場合です。

なお、すべての労災事故で費用徴収の対象となるわけではありません。

徴収の対象となる給付や対象期間は法令などで定められており、その要件を満たした場合に限り費用徴収が行われます。

「故意」「重大な過失」とは

費用徴収の対象となるかどうかは、成立手続をしなかった理由によって判断されます。

未手続だからといって、必ず費用徴収の対象になるわけではありません。

制度では、「故意」または「重大な過失」があると認められた場合に、労災保険給付に要した費用が徴収されます。

「故意」とは

「故意」とされる代表的なケースは、行政機関から成立手続を行うよう指導を受けたにもかかわらず、それでも手続を行わなかった場合です。

このような場合は、成立手続をしない意思があったものとして「故意」と認定されます。

故意と認定された場合は、対象となる労災保険給付に要した費用の100%が徴収されます。

つまり、本来は労災保険が負担した費用の一部または全部を事業主が負担することになるため、事故の内容によっては非常に大きな金額になることがあります。

「重大な過失」とは

一方、「重大な過失」は、行政機関から指導を受けていなくても、適用事業となってから1年以上成立手続を行わなかった場合などが対象です。

成立手続を長期間怠っていたことについて重大な過失があると認められると、対象となる労災保険給付に要した費用の40%が徴収されます。

故意と重大な過失の違い

区分条件徴収割合
故意行政機関から成立手続の指導を受けたにもかかわらず手続をしなかった100%
重大な過失適用事業となってから1年以上成立手続をしなかった40%

以上のことから、「今まで事故がなかったから大丈夫」と考えて成立手続を先送りにすること自体が、大きなリスクです。

参考:労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度の強化について

成立届を出していないことに気づいたら、すぐに手続きを

ここまで説明したように、成立届を提出していなくても、労働者は原則として労災保険の給付を受けることができます。

しかし、その一方で、事業主には労働保険料の遡及徴収や追徴金、さらに一定の場合には労災保険給付に要した費用の徴収など、大きな負担が生じることがあります。

そのため、「今まで事故がなかったから大丈夫」と考えて手続きを先送りにすることは避けるべきです。

成立届を出していないことに気づいたら、できるだけ早く手続きを行いましょう。

保険関係成立届の提出方法や記入方法については、次の記事で詳しく解説しています。

また、成立届を提出する際には、原則として概算保険料の申告・納付も必要になります。

こちらについては、次の記事をご覧ください。


まとめ

労災保険の成立届を提出していなくても、原則として労働者は労災保険の給付を受けることができます。

しかし、未手続だった事業主には、本来納めるべき労働保険料の遡及徴収や追徴金などの負担が生じます。

さらに、未手続のまま労災事故が発生し、「故意」または「重大な過失」があると認められた場合には、労災保険給付に要した費用の100%または40%が徴収されることがあります。

成立届を提出していないことに気づいたら、「今まで事故がなかったから大丈夫」と考えて放置せず、できるだけ早く手続きを行うことが大切です。

参考資料

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この記事を書いた人

【仕事は学び 仕事を遊ぶ 自由に働く】
やりたいことを、やりたいときに、やりたいように。

IT開発や品質管理の経験を経て、
「技術から人へ」とシフトしキャリア支援へ活動を展開。
現在は労災や働き方支援にも取り組んでいます。

技術・人・制度の視点から、
仕事やキャリアの悩みどころを整理しています。
人の問題に見えることを、構造として捉えたい、という視点で書いています。


資格
・2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)
・技術士(総合技術監理部門/情報工学部門)


👉 詳しいプロフィールはこちら
https://yutori.org/hrskad

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